君を微笑み殺す

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君を微笑み殺すとは?

水門おう氏を中心に、「題名だけを統一して中身はそれぞれで書く」という企画が立てられました。
その第一弾のお題が「君を微笑み殺す」です。ここでは、ワタクシ三鷹ユキの愚作を公開いたします。
水門おう氏の『君を微笑み殺す』はこちらからどうぞ。





君を微笑み殺す


 と彼女は言った。
 僕は何を言われたのか全然解ることができなかった。
「もう一度言ってくれ」
 僕はそう訊ね返す。
 けれど彼女は何も言わなかった。言わなかった、というよりも、反応が無かったと言った方が正しいのかも知れない。彼女には僕の声が聞こえている様子さえなかったのだ。
「君が何と言ったのか、よく解らなかったんだ。もう一度言ってくれ」
 僕は再び口を開いた。
 何となく、嘆願をしているみたいだ。僕は自分の言った言葉に対し、まるで他人事のようにそう感じた。
「どうしても知りたい? 私が何と言ったのか」
 彼女は表情一つ変えずにそう言った。
 そう、間違いなく、彼女の表情は少しも変わっていない。それは確かだ。なのになぜか、彼女が僕に向ける視線は、いまや冷血そのものに感じられた。
「私はこう言ったのよ」
 と、彼女は僕の肩に手を乗せる。
「え?」
 僕の鼓動が途端に早くなる。
 彼女は乗せた手を、ますます僕の体に押し付けるようにして。
「殺す! ……ってね」
 彼女は手を離した。
「うわっ」
 いや、彼女は手を離していない。僕は声を上げた後でそれに気づいた。
 彼女が手を離したように見えたのは錯覚で、実は僕の体の方が彼女の手から離れていったのだ。
 すなわち、僕は突き放されたのだ。
「うわああ、うわっわっ」
 不思議な感覚に苛まれ、僕は自然に声を出す。そして、感じるはずだった背中の痛みがいつまで経っても襲ってこないことに同時に気づく。
「うわあああああああああ!」
 僕はしりもちをつくことができない場所にいたのだ。
 彼女が僕の肩に手をかけた時、僕の後ろに地面なんかなかったのだ。あの時僕の背後にあったのは、地上十メートル以上の空中。
 僕は手足をがむしゃらに動かしたけれど、それでも待っている結論に何一つ変化は無かった。
「うわあああああああああああああああああああああああああ!」
 自分があげる酷く客観的な悲鳴を耳障りに思いながら、僕は確かに見た。
 落ちていく僕を屋上から見下ろしている、彼女のその姿を。
 彼女は、微笑んでいた。





 以下はあとがきって言うかネタバレトークって言うか。
 正直に言います。手抜きです。ええ。20分くらいで書きましたから。
 著者自らテーマを語ったら負けだってよく言われていますが、語って惜しいようなテーマではないから全部吐きます。
 要するに、「君を微笑みながら殺す」って話にしたかっただけなんです。
 ただ曲解したかっただけなんです。
 ホント中身ねーな…。


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