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最終列車
最終列車に君と乗った。
どこへ行くかも解らない列車。明日には誰も知らなくなる列車に切符を買って飛び込んだ。
誰もいないホームを離れる。巡回してきた車掌さんに切符を見せると最後の鋏が入れられた。君の切符と二人分。最後の乗客に微笑みかける車掌。この人は明日からどこへ行くのだろう。帰る列車もないのに。
光の無い地球を列車はひた走る。
人のいない車掌室から後ろをのぞいた。僕らが通り過ぎた道はすぐさま果てしない荒野に置き去られて消えてゆく。
僕らはどこへ向かっているのだろう。
対向列車ももう来ない。
ここはレールの上なんだ。言い聞かせたけれど、君はまた不安そうな顔で僕を見た。
「大丈夫、線路はどこかへ続いてるよ」
僕はもう一度そう言った。
「レールが奈落へ続いていたら?」
「それでも線路の上さ」
どんな道を走っていても、僕にはもう「線路の上だ」としか説明できない。
列車は走り出してしまった。何も無い荒野を。月が僕らを追いかけて照らしてくれるけれど、遠くの稜線くらいしか見えない。あとは客室の白熱灯に照らされた一瞬の木々。それ以外の全てが闇。
「れーくんがいれば大丈夫」
「ん?」
「切符とれーくんがいれば大丈夫」
君がそういうから、僕は思わず笑ってしまった。
ぼんやりとした車内。車掌室に戻って仮眠する車掌。ひた走る列車。明日、この線路を走る列車はもう無い。
ここでいう「最終列車」とは終電のことではありません。