濁流が全て飲み込んでしまった。 彼に残されたのは墓石と毎日と絶望と、そして――。 あれ以来祈れなくなった教会。 あれ以来囲めなくなった夕食。 あれ以来作れなくなってしまったパン。 「そのうち帰って来るさ」 口が虚しくなるような嘘を、 たった五歳の子供と塗り重ねて。 受け止めることができなかった。 受け止めないなら、答えは一つしかなかった。
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作文:三鷹逆織 絵:夜道
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